■事件52件、検挙わずか2割…試される福岡県民
条例スタート直前の3月25日に会社事務所に発砲された松俵建設=同県嘉麻市=の松俵義博会長(72)は、「被害者としての不安をみんなに知ってもらい、警察にも奮起してもらいたい」と産経新聞の取材に応じた。
未明に発砲されたとみられ、入り口のガラス扉に銃弾が3発撃ち込まれていた。海外訪問中だった松俵会長は国際電話で連絡を受け、「従業員の無事にまず安心した」と振り返る。
会社を設立してからの約40年間、パチンコ玉を撃ち込まれたり工具で事務所の窓ガラスを割られたりしたことがあった。暴力団の影が付きまとう土建業界。
松俵会長は「建設業界には昔から暴力団が介入し、業者は仕事を取るために常に命がけ。不安を抱えながらも、事件はいつも覚悟している」と話す。
過去の事件はいずれも暴力団による犯行とみられたが、未解決のまま時効を迎えた。「先月の事件でも聞き込みをする警察官の姿はない。すでに捜査が手詰まりなのではないか」と不信感を募らせている。
福岡県内では今年、暴力団追放運動に取り組む自治連合会長宅や、西部ガスの役員家族宅に拳銃が撃ち込まれるなど8件の発砲事件が発生している。しかし、容疑者が逮捕されたのは1件だけで、過去5年間でも発砲事件52件のうち解決に至ったのは11件、検挙率は約21%にとどまっている。
そうした中、資金源を断って暴力団を追いつめようと、事業者から暴力団への利益供与を禁じた暴力団排除条例が施行された。暴力団に毅然と立ち向かう姿勢が、県民側に求められるが、条例施行後に4件の発砲事件が相次いでいる。
県内の別の建設業者は「暴力団から何らかの仕打ちにあうより、要求をのんだほうがいいかもしれない」と漏らし、ホテル関係者も「発砲事件が解決しないのを見ていると、暴力団のホテル利用も見て見ぬふりをするしかないのではないか」と声をひそめる。
県内各地で県警や自治体主催の暴力団排除運動は展開されているが、松俵会長は「警察が真剣に暴力団と対決する姿を見せ、市民がそれを応援するのが本来の運動。事件を解決できないのに、市民に応援を求めるのはもってのほか」と指摘。「まずは警察が捜査力を高めて暴力団ときちんと対峙(たいじ)してもらいたい」と期待した。
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